15.大学入試で受験生に求める学力とは? ~ アドミッション・ポリシーは各大学に任せよ ~

こんにちは。

 

「大学入学共通テスト」が導入されて初めての入学試験の最中です。

鳴り物入り改革であった「記述式問題の導入」と「英語の資格・検定試験の共通テスト」はというと、結局は導入を見送られました。

結構なことだと思います。

参考→「高校生新聞」

 

今回は、これら改革案のキー概念である「アドミッション・ポリシー(入学者受入れの方針)」について、考えます。

具体的には、
・「大学は受験者に対して、入学試験で何を問えばよいのか?」という問題について考えます。

 

【目次】

1.「アドミッション・ポリシー」の意味は? ~その位置づけについて~

2.入学試験で把握すべき3つの学力について ~文部科学省の考え方とは~

3.大学入試は、企業採用試験と同じでよいのか?

4.アドミッション・ポリシー・・・求める学力内容については大学に任せよ

5.今までの投稿一覧

 

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1.「アドミッション・ポリシー」の意味は? ~その位置づけについて~

 

まずは、「学校教育法施行規則 (第四節 認証評価その他 第165条の2」を引用します。

(「認証評価」については、「学校教育法第109条」を参照願います)

 

第百六十五条の二 大学は、当該大学、学部又は学科若しくは課程(大学院にあつては、当該大学院、研究科又は専攻)ごとに、その教育上の目的を踏まえて、次に掲げる方針を定めるものとする。

一 卒業又は修了の認定に関する方針
二 教育課程の編成及び実施に関する方針
三 入学者の受入れに関する方針

 

すなわち、学生を受け入れて送り出すまでの3方針を大学が策定し公開するよう、「学校教育法施行規則」に文部科学省が加えたのです。

(3方針を策定・公表しないならば、大学として認証されませんので、大学にとりましては必須事項となります)

 

なお、大学内、およびマスコミ等では、次のように「出口・中身・入口」と表現されることが多いです。

 

1.(出口についての方針)
「ディプロマ・ポリシー(卒業認定・学位授与の方針)」

2.(中身についての方針)
「カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)」

3.(入口についての方針)
「アドミッション・ポリシー(入学者受入れの方針)」

 

2.入学試験で把握すべき3つの学力について ~文部科学省の考え方とは~

 

文部科学省高等教育局長は毎年、「令和〇年度大学入学者選抜実施要項について」という通知文を各大学長宛に送ってきます。

各大学は、この実施要項に沿って入学試験に関するあらゆる事柄を議論・決定・実行しなければいけないこととなります。

どのようなことが書かれているのかと申しますと、例えば、受験生を評価するにあたりアドミッション・ポリシーに基づき「3つの学力」を把握することが記されています。

 

3つの学力については、このように書かれています。

 

能力・意欲・適性等の評価・判定に当たっては,アドミッション・ポリシーに基づき,学力を構成する特に重要な以下の三つの要素のそれぞれを適切に把握するよう十分留意する。

その際,入学後の教育との関連を十分に踏まえた上で,入試方法の多様化,評価尺度の多元化に努める。
なお,高等学校の学科ごとの特性にも配慮する。

① 基礎的・基本的な知識・技能(以下「知識・技能」という。)
② 知識・技能を活用して,自ら課題を発見し,その解決に向けて探究し,成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力(以下「思考力・判断力・表現力等」という。)
③ 主体性を持ち,多様な人々と協働しつつ学習する態度

 

(引用元:「令和3年度大学入学者選抜実施要項について(通知)」

 

結論としましては、①②③が「学力」を構成する3要素であると文部科学省が主張していることになりますね。

 

3.大学入試は、企業採用試験と同じでよいのか?

 

文部省が主張する学力3要素、まるで企業の採用試験において人事担当者が言いそうな言葉ではないでしょうか?

企業の人事担当者が言いそうな言葉は、例えば、「弊社が皆さんに求める能力は三つあります。それは第一に「知識」。第二に「問題発見解決能力」。第三に「コミュニケーション能力」です」。

大学入学試験で受験生に求める学力が、企業採用試験で学生に求める学力と同じで良いのでしょうか?

 

文部科学省が求める学力の3要素について、順に考えていきましょう。

 

1.① 基礎的・基本的な知識・技能。

これは、理解できます。

 

2.② 知識・技能を活用して,自ら課題を発見し,その解決に向けて探究し,成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力。

ここからが急に理解不能になります。

何点か挙げます。

・① とは異なり、単語に「能力」が付いていることからが不思議です。

・「知識・技能を活用して,自ら課題を発見し,」とありますが、課題というものは「知識・技能を活用」すれば発見できるのでしょうか?

・「成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力」とありますが、成果等を表現するとはどういうことでしょうか?
無言で黙々と作業をこなすタイプ、有言実行・無限実行のタイプ、課題を課題とすら感じないタイプ、それぞれ成果の表現方法は異なります。
そもそも、思考力・判断力・表現等の能力は、成果等を表現するためのものでしょうか?
余りにも表現優先となっている点が不可解です。

 

3.③ 主体性を持ち,多様な人々と協働しつつ学習する態度

どのような入学試験をしようとも、この学力は測れないです。
面接を導入しても不可能です。
ましてや、「態度」に対してどのように優劣をつけるのでしょうか?
「態度」の優劣は、嫌みですが面接官の好みでしかありません。

 

②と③の「表現」「多様性」「協働」という単語は、社会一般で流行っている言葉を「要項」に流用しただけなのではないかと思いたくなります。

 

 

4.アドミッション・ポリシー・・・求める学力内容については大学に任せよ

 

「③ 主体性を持ち,多様な人々と協働しつつ学習する態度」。

文部科学省の言葉です。

 

受験生を評価する学力に「多様な人々」と書くくらいならば、同様に「多様な大学」を認めて欲しいものです。

 

5.今までの投稿一覧

 

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