財務指標(基本金)

目次

1.財務は、「基本金」をチェック!

・大学評価は、企業評価と同様、財務を観るのが大切です。
・大学の財務指標の要は「基本金」にあります。

2.基本金の概略

・言葉で基本金を説明すると、、、。
・基本金を絵にすると、、、。
「第2号基本金」と「第3号基本金」の充実こそが大切です。

1.財務は、「基本金」をチェック!

 

ここでは、「財務」の観点から見た、大学の体力の違いについて述べたいと思います。

大学評価は、企業評価と同様、財務を観るのが大切です。

 

大学を評価する際は、つぎの3点をチェックすることがほとんどでしょう。

・出口である就職。
・入口である入試倍率。
・中身であるカリキュラムと大学生活。

週刊誌やサイトの記事はこの3点について記されていることがほとんどですね。

しかし、投資家が企業を評価する際は、むしろ「財務状況」について調べることが多いのではないのでしょうか?
実は大学評価も財務状況で評価することが有効です。

企業会計と大学会計は幾分異なりますが、大きくは同じです。

大学の財務諸表の名称については、次の3種が主なものです。

1.企業の「損益計算書」に相当する「事業活動収支計算書(旧:消費収支計算書)」。

2.企業の「キャシュフロー計算書」に相当する「資金収支計算表」。

3.企業の「貸借対照表」に相当するのは同じ名称の「貸借対照表」。

 

大学の財務指標の要は「基本金」にあります。

 

大学の財務が健全かどうかを計る指標は数々ありますが、
私が一番重んじたいのが、「基本金」と呼ばれる項目です。

「基本金」とは「資産」から「負債」を除した金額です。

「事業活動収支計算書(旧名:消費収支計算書)」と「資金収支計算表」は、各年度ごとの教育・収支を表す単年度の計算書です。

一方、「貸借対照表」は開学以来現在に至るまでの大学の教育・財務活動の蓄積を表しています。
中でも貸借対照表に数字が挙がっている「基本金」は、大学の財産ともいえる重要な数字であり、大学の今までの経営及び教育方針が如実に表れるものです。

 

2.基本金の概略

言葉で基本金を説明すると、、、。

 

「企業会計 大学会計基準 違い」の言葉をGoogle検索欄に入力し、上位に表示された基本金の説明を以下に載せます。

”私立学校を創立するためには、校地、校舎、機器備品、運営資金が必要です。
これらの元手(財産・資金)は、個人または多数人による財産の寄付により準備されます。
この寄附された財産の取得価額が基本金となります。

この基本金は、第 1 号から第 4 号基本金まで 4 つに分類され、貸借対照表に表示されます。

第1号基本金は、校地、校舎、機器備品等の固定資産の取得価額の合計です。

第 2 号基本金は、中長期事業計画を実現するための資金積立を前もって基本金とするものであり、たとえば新たに学校等を設置するためや現設置学校等の規模拡大のために積み立てる金銭等資産です。

第 3 号基本金は、学生へ給付する奨学金等の運用原資(基金)であり、継続的に保持し運用していく金銭等資産です。

第4号基本金は、学校を運営していくための資金である恒常的支払資金相当額年
間支払総額の 1/12 程度)です。

なお第 2 号基本金及び第 3 号基本金は、学校法人の中長期的な事業計画に基づいた基本金組入れ計画表に基づき、貸借対照表の基本金に組入れることが厳格に定められています。

 

基本金を絵にすると、、、。

 

上記を以下に簡潔に換言します。

()内は、イメージしやすいように書きます。

【第1号基本金】
土地代金・建物代金・機器備品の取得金額の累計
(借入返済済みの土地や建物や図書や備品など、目に見える純資産のことです)

 

【第2号基本金】
将来新たな事業、特に校舎建設をするためにあらかじめ準備しておく積立資金
(将来の大学発展のために、今の内から積み立てておく資産です)

 

【第3号基本金】
奨学金を初めとする恒常的な教育・研究をするために保管している基金
(決まって毎年学生と研究に還元するためにプールしている基金です)

 

【第4号基本金】
念のために保管している維持費
(支払いを維持するために必要な資金の内、決まった額を保持する資金)

これら1~4までの4つの基本金の違いについて考えたいと思います。

まずは「第1号基本金」。

授業や実習をするための土地や校舎や研究棟は必ず必要ですね。
ですから「第1号基本金」に資金を投入することは、教育のためにも志願生集めのためにも大切なことです。
また、大学や学部を設置するためには、文部科学省の「大学設置基準」で最低限の土地の広さや校舎の大きさが決まっています。

土地などの金額は購入価格である簿価ですので、第1号基本金が同じ金額であっても、実勢価格においては歴史が古い大学ほど価値は膨大です。

使用している校舎を売ることはできませんが、使用していない(今後も利用する計画がない、余っている)土地を売ることは可能です。
したがいまして、利便性が高い土地は、その意味に限定すると「流動資産」とも言えます。

次に「第4号基本金」ですが、こちらの金額は定額ですので、大学の財務状況を判断する材料にはなりません。

 

「第2号基本金」と「第3号基本金」の充実こそが大切です。

 

次からが、大学の財務を判断するに大切な基本金です。

一番大切な「第2号基本金」。

充実した学生生活に必要となる校舎を将来にわたって増築したり、最先端の機器備品を購入し研究することは大学の使命です。

第2号基本金が積み立ててあれば、必要な時に取り崩して教育の為に役立てることが出来ます。 実は伝統校・有力校・人気校と呼ばれている大学ほど、第2号基本金が豊富に積み立てられている傾向があります。

逆に、財務に余裕がない大学ほど第2号基本金が少額です。大学によっては全くが第2号基本金が積み立てられていないケースがあります。

このような大学の場合、時代に合った教育を行おうにも迅速な対応ができかねます。
新たな事業を行うときは、第2号基本金から賄うことができませんので、外部からの借入金や当期の収入に頼らざるを得ません。

次に、「第3号基本金」。

この基金がある場合は、海外留学助成金・奨学金・研究基金として、基本金の果実(利子など)から学生負担の経費を援助することができます。
海外からの留学生や研究生を招くときに、この基金を彼らの奨学金に充てることもできます。

第3号基本金が不足する大学は、奨学金の原資がありません。
この場合、本来は大学全体に還元すべき収入から奨学金を賄うこととなります。
この第3号基本金も第2号基本金同様、伝統校・有力校・人気校と呼ばれている大学ほど基金額が大きい傾向にあります。

大学に対する評価の観点は、入試難易度・カリキュラム改革・教育の熱心度・施設の充実・就職先などが主のようです。
しかし、財務がしっかりとしていることが、長期にわたり大学が安定しているか否かを判断する際に基本となります。

現在大学は財務諸表を各大学のサイトで公開しています。
貸借対照表の「第2号基本金」と「第3号基本金」の額と割合にもお目を通していただきたく思います。