こんにちは。
今回は、「教員免許更新制の廃止」について記します。
「教員免許更新制の廃止」が文部科学省で固まりました。
今後は審議会などの議論を経て、廃止が決定する見込みです。
なお、この制度は2007年(平成19年6月)の「改正教育職員免許法」の成立により、2009年(平成21年4月1日)から導入され、12年間も続いています。
2006年に第一次安倍晋三内閣が立ち上げた「教育再生会議」による提言の一つです。
【目次】
1.教員免許更新制の廃止に関する記事を3点引用
2.そもそも、教員免許更新制とは?
3.もともと、教員免許更新制の導入が無意味だった
4.参考リンク集(「教育再生会議関連」および「教員志願者の減少」関連)
5.今までの投稿一覧
1と2は、マスコミや文部科学省サイトの引用です。
3に、私の考えを記しました。
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1.教員免許更新制の廃止に関する記事を3点引用
各社のタイトルでお分かりの通り、次の順で詳しくなっていきます。
タイトル:「10年ごとの教員免許更新 廃止へ 文部科学省」
10年ごとに教員免許の更新が必要な「教員免許更新制」について、文部科学省は教員の働き方や経済面で負担が生じているなどとして廃止する方針を固めました。審議会などの議論を経て最終的に決定する見通しです。
「教員免許更新制」は小中学校や高校などの教員免許の有効期間を10年とし、講習を受けさせたうえで免許を更新する制度で、教員の資質能力の保証を目的に第一次安倍政権のもとで法改正され、2009年度から導入されました。
この制度では30時間以上の講習や3万円ほどの受講料が教員の負担となっているなどと課題が指摘されていて、萩生田文部科学大臣はことし3月に中教審=中央教育審議会に教員免許更新制について抜本的な見直しを行うよう諮問していました。
また、今月5日に文部科学省が公表した教員への調査結果では、講習の総合的な満足度について肯定的な回答は2割弱だった一方、否定的な回答が6割近くに上っていました。
こうした中、文部科学省は多忙な教員の負担感の増加や人材確保への影響などを考慮して、教員免許更新制について廃止する方針を固めたことが関係者への取材でわかりました。
一方、今後も教員の資質能力を確保していくためには、オンラインで受講できる研修の活用や、教育委員会や大学などが提供するプログラムを集約する仕組みなどの検討が必要だとしていて、中教審などでの議論を踏まえ最終的に決定する見通しです。
次に「朝日新聞デジタル」(2021年7月12日13時54分)から。
タイトル:「教員免許更新制、文科省が廃止検討 うっかり失効の原因」
教員免許に10年の期限を設け、更新前に講習を受けないと失効する「教員免許更新制」について、文部科学省が廃止する方向で検討していることが、政府関係者への取材で分かった。教員の資質確保を目的に第1次安倍政権時代の2009年度に始まったが、教員の負担が増え、教員不足の一因にもなっていると、学校現場から批判が出ていた。
更新制については萩生田光一文科相が3月、中央教育審議会に「抜本的な見直し」を諮問した。中教審では廃止論が大勢で、8月にも廃止の結論を出す見通し。これを受け、文科省は廃止を表明し、来年の通常国会で必要な法改正を目指す方向だ。廃止となった場合、教員が受けてきた30時間以上の更新講習の代わりに、オンラインによる教員研修の充実などが検討されている。
更新制は「不適格教員の排除」を目的に自民党などが導入を求め、「教員の資質確保」に目的を変えて09年度に始まった。無期限だった幼稚園や小中高校などの教員免許に10年の期限を設け、期限が切れる前の2年間で計30時間以上、大学などでの講習を受けなければ失効するしくみだ。
ただ、夏休みなどに自費で受ける講習は多忙化する教員に不評で、文科省が今月5日に公表した調査では、約6割が講習に不満を抱いていた。更新期限があるため、定年退職前の教員が早期退職する動機となったり、産休や育休をとる教員の代わりに任用する教員が不足したりと、教員不足の一因とも指摘された。また、制度が複雑なため、現職教員が更新を忘れて教壇に立てなくなる「うっかり失効」も相次いでいた。
これまでの中教審の小委員会で文科省は、都道府県などが行う教員研修をオンラインなどで充実する案を提示した。委員からは「こういうことができれば更新制でなくてもできるのではないか」などと賛同する発言があり、廃止論が大勢となっている。(伊藤和行)
最後は「読売新聞オンライン」(2021年7月11日 05:00)です。
タイトル:「【独自】教員免許更新制、廃止へ…「教育再生」掲げたが負担に比べ効果薄く」
政府は、幼稚園や小中高校などの教員免許を10年ごとに更新する教員免許更新制を廃止する方針を固めた。更新制は教員にとって手間がかかる割に、資質向上の効果が低いと判断した。免許を無期限とする代わりに、教育委員会による研修を充実・強化させる。文部科学省が8月中に中央教育審議会(文科相の諮問機関)に方針を示し、来年の通常国会に関連法改正案を提出する考えだ。
更新制は、「教育再生」を掲げた第1次安倍内閣時代の2007年の法改正で導入が決まり、09年度から実施された。目的は不適格な教員の排除ではなく、最新の知識・技能の習得だ。文科省の調査によると、昨年3月末が期限だった現職教員のうち、特例による期間延長も含めて免許更新したのは99・43%だった。
10年の有効期間満了が近づくと、教員は全国の大学などで開かれる更新講座から受講先を選び、申し込む。教育政策の動向や教科指導に関する30時間以上の講習を修了し、教委に申請すれば免許更新が完了する。
しかし、学校現場からは講習に「実践的ではない」「教委の研修と内容が重複している」などの不満が出ていた。受講時間確保が難しいとの声や、数万円の受講料負担への不満も多い。
こうした負担感が、教員不足に拍車をかけるとの懸念も出ている。文科省が4~5月、現職教員約2100人を対象に行ったアンケートでは、50代での受講について、36・8%が「早期退職のきっかけとなると思う」と回答した。
講座の有効性について、文科省内でも、10年に1回では時代の変化に対応できないとの懸念がある。このため、萩生田文科相が3月、更新制の「抜本的な見直し」を含めた教員養成のあり方を中教審に諮問し、制度の再検討を進めていた。
文科省は、頻繁に実施できる各教委の研修を充実させ、教員の質向上を図る方針だ。情報通信技術を活用して教員の研修履歴を記録・管理し、個人の特性に応じた内容とすることを検討している。場所や時間を問わずに受講できるオンライン研修も拡充する。研修の具体的な内容については中教審で議論する予定だ。
2.そもそも教員免許更新制とは?
教員免許更新制について、文部科学省のサイト(2021年7月13日時点)を以下にコピーします。
長いですので、冒頭の「目的」箇所(太字にしました)だけでもお読みいただければと思います。
目的
教員免許更新制は、その時々で求められる教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知識技能を身に付けることで、教員が自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ることを目指すものです。
※ 不適格教員の排除を目的としたものではありません。基本的な制度設計について
○新免許状(※1)には10年間の有効期間が付されます。
○有効期間を更新して免許状の有効性を維持するには、2年間で30時間以上の免許状更新講習の受講・修了が必要です。
○旧免許状(※2)所持者にも、更新制の基本的な枠組みが適用されます。※1 平成21年(2009年)4月1日以降に初めて授与された免許状
※2 平成21年(2009年)3月31日以前に初めて授与された免許状
旧免許状所持者が平成21年4月1日以降に新たに免許状を授与された場合も、旧免許状として授与されます。
旧免許状には有効期間は付されませんが、生年月日によって最初の修了確認期限が設定されます。
更新講習修了確認を受けて免許状の有効性を維持するには、2年間で30時間以上の免許状更新講習の受講・修了が必要です。
教員免許状を有効な状態で保持するためには、有効期間満了日又は修了確認期限の2年2か月前から2か月前までの2年間に、
大学などが開設する30時間以上の免許状更新講習を受講・修了した後、免許管理者(都道府県教育委員会)に申請する必要があります。
また、有効期間の延長又は修了確認期限の延期、講習の受講免除が可能な事由に該当する場合、免許管理者(都道府県教育委員会)
に申請することにより、有効期間の延長又は修了確認期限の延期、講習の受講免除が可能な場合があります。教員免許更新制のおおまかな流れ
(1) 有効期間の満了の日を確認。若しくは最初の修了確認期限を確認。
新免許状所持者の方は、所持している免許状に記載されている有効期間満了日を確認してください。
有効期間の異なる複数の免許状を所持している場合は、その最も遅く満了する日が、自動的に全ての免許状の有効期間満了日となります。
旧免許状所持者の方は各自が必ず下記のページ「表1、表2」を御覧頂き、
最初の修了確認期限 令和 年 月 日を確認してください。
⇒修了確認期限をチェック(2) 受講資格を確認
免許状更新講習は、受講対象に該当する者のみ受講することができます。
⇒受講対象者について(3) 各自が文部科学省や大学のホームページ等を確認して、受講したい免許状更新講習を選択 (対面式講習とインターネット等を活用した通信式講習の2種類があります。)
あなたの免許状更新講習受講期間(有効期間の満了の日又は修了確認期限の2年2か月前から2か月前までの2年間)
令和 年 月 日 ~ 令和 年 月 日
をご確認下さい。
⇒講習開設情報(4) 各自が各大学等に受講申込み
受講申込みの際、受講対象に該当している証明が必要になります。(※証明の方法は、各大学等の指定の様式によります)
(5) 各大学等で免許状更新講習を受講します
(6) 講習の課程を修了
30時間以上の講習の課程を修了(課程の一部である場合は履修)した場合は、
各大学等から修了認定(履修認定)され、修了証明書(履修証明書)が発行されます。(7) 有効期間の更新又は更新講習修了確認のための申請
各自が修了証明書又は合算して30時間以上となる履修証明書を添付して、免許管理者(勤務する学校が所在する都道府県教育委員会(現職教員の場合)又は住所地の都道府県教育委員会(現職教員でない場合))に有効期間の更新又は更新講習修了確認のための申請を行う必要があります。
⇒申請先一覧(8) 有効期間更新証明書又は更新講習修了確認証明書の発行
免許管理者は、申請者が免許状更新講習の課程を修了したことを確認し、有効期間更新証明書又は更新講習修了確認証明書を発行します。
(9) 次回の有効期間満了日又は修了確認期限の確認
次の有効期間満了日又は修了確認期限(10年後)まで持っている全ての教員免許状が有効です。
免許状更新講習の受講対象者の拡大について
このたび、「子ども・子育て支援法及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部の施行期日を定める政令(平成25年政令第193号)」が平成25年6月26日に公布され、同年7月1日に施行されるとともに、平成25年8月8日より「免許状更新講習規則の一部を改正する省令(平成25年文部科学省令第23号)」が公布され、同日から施行されます。
この改正省令では、幼稚園教諭免許状を保有している認可保育所の保育士が、免許状更新講習を受講できるよう、受講資格が拡大されました。なお、改正省令の詳細については下記をご参照ください。
・教育職員免許法施行規則の一部を改正する省令等の公布及び施行について(通知)(※国立国会図書館ホームページへリンク)
改正箇所
【改正前の免許状更新講習が受講できる対象者】
・ 幼稚園を設置する者が設置する認可保育所及び認可外保育施設の保育士
↓
【改正後の免許状更新講習が受講できる対象者】
・ 認可保育所の保育士
・ 幼稚園を設置する者が設置する認可外保育施設の保育士
お問合せ先
総合教育政策局教育人材政策課
3.もともと、教員免許更新制の導入が無意味だった
最後に私の考えを書きます。
「教員免許更新制」に係る「「改正教育職員免許法」が成立した2007年(平成19年)、私は大学の教務部で教職課程を担当していました。
「他の職業ではなく、教員にだけ30時間もの講習を受けさせるとは何ごとだ!!!」
とその時、驚きました。
「この制度を提案した委員(有識者)たちは、『あなたの今の職業を続けるために10年ごとに30時間の講習を受けるべきだ』と命令されたら、どう感じるだろうか?」
と反論したくなった記憶があります。
「委員(有識者)は、ご自分こそ、自身の職業の研修を受けなさい」
と憤りました。
「各教育委員会は既に先生に対して研修を行っている。新たな講習会の内容は、既存の研修会と重複しないのだろうか? 先生や教育委員会の負担が増えるだけではないか」
と気になりました。
「現場の先生方の今後の教育実践に活かせる講義を大学教員が出来るのか?」
と心配になりました。
このことを逆に申せば、
「大学教員の教育能力と大学の運営能力が外部から問われることになる。大学の選別をする指標に使用されるのではないか?」
ということです。
これらの危惧を一言で申せば、こうです。
「教育現場の改善がこんな制度で出来ると考えている政治家や文部科学省においては、現実感覚が欠如しているのではないか?」
案の定、今になって当時の「有識者」なる構成員を「文部科学省サイト」で調べますと、次の通りです。
構成員としては、「有識者」に「内閣総理大臣、内閣官房長官、文部科学大臣」が加わります。
当時は、順に安倍晋三、塩崎恭久、伊吹文明の3氏でした。
拡大→「教育再生会議 有識者」
なかでも、「教員の資質向上・教員免許の更新制度」を審議した第一分科会の有識者は以下の通りです。
何という豪華な顔ぶれでしょう?
しかし、一般的教員像と合致する方は構成員に見当たりません。
※ 義家弘介氏の後任の宮本延春氏にみ現役の教諭の肩書です。
・2005年に母校豊川高校に就任なさっばかりの方でした。
・現在は教員をお辞めになって、講演活動や著作活動をなさっているようです。
(参考にしたサイト)
→「宮本延春オフシャルサイト」
→「日本綜合経営協会サイト」
→「ウィキペディア 宮本延春」
【結論】
「教員免許更新制」は、教員叩きの世論が高まった時に、その高まりを抑えるためにアリバイ的に作った制度だと私は考えております。
この制度の運用により、先生方の教育に関する知識と技能がどれだけ高まったのでしょうか?
さらには、人的・物理的・時間的・金銭的資源が大量に奪われてきたことを思うに、実に悔しく悲しい思いがします。
今後、文部科学省あるいは政治家が主導となりまたぞろ新たな制度を創設するならば、まずは現場の意見を充分にくみ取る仕組みを作っていただきたいものです。
「政治家やマスコミからの圧力と世論誘導→文部科学省での試案作り→審議会開催によるアリバイ作り→文部科学委員会での審議→国会での決定」、
この現在の流れの当初に、「現場からの要望提出」という段階を制度的に作ることはできないものかと願います。
今後の委員会・国会審議に置いて、「教員免許更新制」が必ずや廃止となりますように。
4.参考リンク集
【教育再生会議関連リンク】
・第一次安倍晋三内閣が2006年10月閣議決定により設置した
→「教育再生会議」
・「教育再生会議」の現在の後継機関は、「教育再生懇談会」を経て、2013年(平成25年)1月に発足した
→「教育再生実行会議」
・ご参考まで
→「教育再生実行会議」の「最新議事録 2021年6月3日」
【教員志願者の減少関連リンク】
以下は、「教員志願者の減少に関する記事」のリンク集です。
今回のブログ内容とは直接にはむすびつきがないものの、なにかしらの接点があると思い載せます。
→「2021年教育崩壊!?教員採用試験倍率低下にみる問題の核心(アゴラ)」
→「学校の先生になりたい人が減っている!? 〜教員不足で露見した過剰労働の現実(イミダス)」
→「令和2年度(令和元年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況について」
5.今までの投稿一覧